特集 水の浄化活動 
「えむえむ関東99号」より
=EMネット神奈川=
悪臭で嫌われものの「ため池」が
かまくら景観百選に選ばれるまで

 NPO法人EMネット神奈川

 

悪臭・ヘドロ・ごみの池

大規模な住宅造成によって谷戸の風景は失われていますが、最近では身近な里山として保存運動も盛んです。JR大船駅西口から徒歩10分、鎌倉市の閑静な住宅地の中にある「谷戸池」も谷戸の風情を残す貴重なため池です。昔は、農業用水として使われた池ですが、50年ほど前は泳ぐ人もいたぐらいきれいだったといわれています。
しかし、周辺の宅地開発に伴い、農業用水としての使用がなくなり、不法投棄も目立つようになって、水質も急激に悪化していきました。
生活排水が流れ込むため、底にはヘドロが溜まり、池底のあちらこちらからメタンガスが吹き上がり悪臭もひどく子供たちも避けて通るほどでした。

周辺の住民は、半世紀以上前から、桜の景観と池の水質を以前の子どもたちが泳げるレベルに戻す目的で活動してきましたが、水質改善に本格的に取り組みはじめたのは平成6年のこと。
「谷戸池を良くする会」(菅原政夫会長)を発足させ、本格的に水をきれいにする活動を始めました。
しかし、「ごみを捨てないで」などの標識はたてたものの、市民レベルで水質の改善をはかるのは至難の業。どう取り組めばいいのか、思案にくれていたとのこと。
偶然にも会長と鎌倉でEMを販売する㈱イーエムジャパンの信國社長が出会い、同社が協力を申し出たのがことの始まりです。

お助けマン「EM菌」参上
 
 地域住民と企業のコラボが大成功 
谷戸池を良くする会菅原政夫会長と
㈱イーエムジャパンの信國社長
 
 池の透明度改善のための実験中
 
 団子でおままごと?
 
 投げるぞ~地元イベントに定着

約2800㎡、約2500t、水の流入のない人工のため池の浄化。全国でも前例が少ないため、(株)イーエムジャパンとしてもはじめは試行錯誤だったようですが、夏場にEM活性液を入れはじめてから、すぐに悪臭は消え、鼻をつまんで歩いていた住民から、「あれ、どうしたの」という声が聞かれ始めました。
まず、ヘドロが分解されて、小さな魚たちが生まれ、コイやカメなど水棲動物が生き生きとしてきました。
5年後には、カルガモ、カワセミなどが飛来し、池全体の生態系に変化が見られました。
(株)イーエムジャパンが主体となった主にアオコの分解と悪臭の除去を目的とした取り組みは、ほぼ7年目で実現しました。

このころから、春には水面に映える満開の桜のライトアップも始まり、地域の新名所デビューを果たしました。この桜は、地域の人々が大切に守り育ててきたものです。

平成14年からは、住民を巻き込んだ本格的な浄化活動が始まり、EMセラミックスやEM活性液の投入、EM団子の投入などの活動が定期的に行われるようになると水質の変化は大きく変わりました。平成21年6月には初めてカルガモの5匹のひなが誕生し、地元タウン紙にも掲載されてほほえましい話題となりました。また、水質の改善は大腸菌数の減少にもはっきりと見られ、平成14年大腸菌数は3,900だったものが、平成22年から0になり今年も検出されていません。

現在は、年間EM活性液10tを投入し、山土にEM活性液、EMボカシ、EMセラミックパウダー等を練り合わせたEM団子を年2回春と秋に1回平均5,000個を投入しています。
EM活性液は(株)イーエムジャパンの横須賀長井倉庫で仕込んだものを運び、EM団子の山土は鎌倉市に提供してもらっています。EM活性液の投入は、(株)イーエムジャパンの社員が担当します。EM団子づくりには、「谷戸池を良くする会」のメンバーに加えて近所の大人や子どもが加わっています。10年近い活動となると、EM団子づくりは手馴れたもので、作業が始まるとすぐに井戸端会議がはじまり賑やか。年2回の団子づくりが住民の楽しみになり、いわゆる地域コミュニティの再生という役割をも担っているようです。

かまくら景観百選に選ばれる

平成11年には鎌倉市の「かまくら景観百選」にこの谷戸池が選ばれました。活動を開始して5年後という快挙でした。かまくら景観百選事業は、「鎌倉のまちの魅力とは何か」をとともに考えることによって、景観づくりの意識を高めること、地域の景観資源を明らかにすることを目的にしたもので、市内外の人から357件の応募があり、市民投票などを通して86件が選ばれました。
 

「谷戸池」が選ばれた理由は、

・景観づくりへの貢献度:無用の長物だった汚れた溜池を地域の資源として活用し、鎌倉らしい谷戸の景観を再生したことは優れている。
・活動の継続性・将来性:10年近く継続した活動によって池をきれいにしてきた継続性がある。自分達の取り組みの成果を行政にも認識させていく将来的な展望も評価できる。
・活動の先進性・創意工夫:水質浄化の手段の一つとしてEMに着目している点や地域のこどもを巻き込んでいる点が評価できる。
・活動・運営の自立度:町内会の活動の一部として自立している。市内の企業(EMの提供)や市と良好なパートナーシップを築いている所は評価できる。
・市民からの主な意見:鎌倉特有の谷戸地形にある池の四季折々の風情を守っている/お花見の人が楽しめる程手入れが行き届いている/池にはいつも木花小鳥が集って美しく静かな所。
・総合評価:利用されなくなった溜池を、地域の景観資源として、水質浄化などを地域住民によって行い、再生させた功績は大きい。地元企業との協働もユニークでこの様な地域資源を生かしたまちづくりは他地域の参考になる。(鎌倉市ホームページ)
ということです。

今年は震災をはじめ、天災が続いています。ため池への土砂流入など問題が全国で発生することも考えられます。こつこつ続けてきた鎌倉市の「ため池」の復活作戦がこれからお役に立つかもしれません。詳しくは、(株)イーエムジャパン(TEL 0467-45-4185)まで